「医療保険と県民共済の違いは?」「医療保険は県民共済で十分なの?」と、疑問をもつ人も多いでしょう。どちらが自分に合うかも知りたいところです。
そこで当記事では、両者の違いをはじめ、メリット・デメリット・向く人の特徴を解説します。「医療保険は県民共済で十分?」の真偽も解説するため、医療保険と県民共済で迷う人はぜひ参考にしてください。
県民共済とは?
県民共済とは、各都道府県の生活協同組合が運営する保険事業です。47都道府県すべてで展開されており、「都民共済」「府民共済」「道民共済」「全国共済(※神奈川県での呼称)」も含まれます。
そもそも共済には、「お互いにお金を出し合い助ける」という意味があり、組合員が掛け金を出し合い、お互いのリスクに備えます。
【県民共済が保障する3つの内容】
- 生命共済…ケガや病気・死亡
- 新型火災共済…住宅や家財
- 障害保障型共済…交通事故や不慮の事故
県民共済の特徴は?医療保険と違うポイントは?
まずは、県民共済の特徴や「医療保険と違うポイント」について解説します。詳細は以下の通りです。
共済事業は非営利のため、余った保険料は割戻金として組合員に返還される
県民共済と医療保険の大きく異なる点は、営利事業か否かです。共済事業は「非営利事業」であり、民間の保険会社は「営利事業」に分類されます。
営利事業者である民間の保険会社が株式会社だった場合、利益を上げたら株主や従業員への還元や設備投資などにあてられます。一方で非営利事業者は、利益が出ても構成員に分配はしません。
そのため、県民共済の共済事業で余った保険料は、一年に一度のペースで割戻金として組合員に返還されます。
※利益が出なければ、割戻金は返還されません。
基になる法令や監督官庁が違う
県民共済と医療保険は、ベースになる法令や監督官庁が異なります。表にまとめると、以下の通りです。
県民共済 | 医療保険 | |
---|---|---|
監督官庁 | 厚生労働省 | 金融庁 |
ベースとなる法律 | 消費生活協同組合法 (生協法) | 保険業法 |
セーフティネット | なし | あり |
保障期間 | 定期・終身など、保険商品による | 最長で85歳 |
一方県民共済は保険業法の管轄外であるため、破綻した場合に保障があるとは限りません。とはいえ、一定の会員が在籍し、還付金が返還される事例も多いため、あくまで「万が一の際」という意味合いで捉えると良いでしょう。
また県民共済と医療保険は、保障期間も異なります。県民共済の保障期間は、最長で85歳と限定される一方で、医療保険は商品によって終身タイプも選べることが特徴です。
医療保険のほうがバリエーションが豊富でカスタマイズしやすく、保険料にも幅がある
県民共済の保障はシンプルで、医療保険と死亡保障に限られます。掛け金もたとえば「総合保障Ⅱ型」であれば、全員が一律2,000円/月です。医療特約やがん特約をつける場合にも、料金は一律です。
※埼玉県民共済は特約の取扱いなし/2024年5月時点
一方医療保険はサービスによって保障内容が異なり、状況や好みに応じて選べるなど、バリエーション豊富でカスタマイズしやすいでしょう。保険料も、若者や健康な人が安いなど、幅があることも特徴です。
主に4種類ある県民共済の「生命共済」とは?
県民共済には「生命共済」という、ケガ・病気や死亡を保障する制度が4種類存在します。それぞれの詳細は、以下の通りです。
総合保障型
総合保障型では、「死亡保障」「入院保障」「通院保障」がセットになっています。契約者の死亡時には受取人に死亡共済金が支払われ、契約者が所定の入院や通院をした際には、入院保障または通院保障が受けられます。
総合保障型が保障されるのは、65歳になるまでであり、終身タイプは存在しません。とくに解約の申し出がなければ、満65歳以降になったタイミングで自動的に熟年型へ切り替わり、85歳まで保障されます。
入院保障型
入院保障型は、入院・通院・手術に特化したタイプの生命共済です(※埼玉県民共済には、入院保障型が存在しません)。入院に関連する保障が手厚く、日帰りも含め入院1日目から保障が受けられます。
手術はもとより、健康保険の対象外である先進医療(※規定あり)も保障対象です。事故の通院も、1日目から保障されます。
前述の総合保障型と同様に、保障される期間は65歳までであり、満65歳以降は熟年タイプの「入院保障型(※85歳までの保障)」として継続されます。
こども型
こども型は、18歳までの子どもに対する保障に特化しており、月々1,000円または2,000円での加入が可能です。保障内容は、入院・通院・手術・がん・先進医療など多岐にわたります。
万が一子どもが死亡した際には、死亡保障が実施され、第三者への損害賠償という事態になれば一定の損害を補償します。こどもが18歳になってからは、総合保障型(埼玉県の場合は医療・生命共済)に切り替えられることが特徴です。
傷害保障型共済
傷害保障型共済とは、事故(交通事故、不慮の事故など)によるケガに特化した保障であり、死亡や重度障害になると共済金も支払われます。
※埼玉県民共済では、傷害保障型共済を取扱っていません。
また事故によるケガを保障するという特性上、健康告知が不要なため、既往歴や持病があっても加入できることが特徴です。
保障期間は85歳までであり、65歳になると、入院・手術・死亡・重度障害といったすべての保障金額が減額されます。
県民共済に加入するメリットは?
県民共済に加入するメリットは、どういった内容なのでしょうか?主なメリットは、以下の通りです。
シンプルな保障内容と割安な掛け金
先述の通り、県民共済の保障内容は主に4種類であり、料金設定も一律でシンプルな点が特徴です。同じコースであれば、加入時の年齢や健康状態が異なっても、掛け金は原則的に変わらず、保険料の見直しもありません。
また「こども共済は1,000円~」「総合保障型は2,000円~」であり、比較的低価格で開始できることも特徴です。
診断書の提出が必要ない
県民共済は、健康状態の申し出が「自己申告で良い」という背景から、診断書の提出が不要です。診断書を取得する手間もかかりません。
しかし誰でも加入できるわけではなく、持病や手術歴などの正しい申告は必須です。医療機関の電子カルテや健康診断内容を調査され、告知内容の虚偽が発覚すれば保険金を受け取れないため、虚偽の申告は絶対に行わないようにしましょう。
決算で余剰金が発生した場合には、割戻金として還元される
県民共済は非営利事業者であるため、決算で余剰金が発生すれば、組合員に割戻金が還元されます。余剰金は、組合員が年間に支払った共済金額から、県民共済の事業経費などを引いたものです。
たとえば都民共済の令和4年における割戻率の実績は、「総合保障型・入院保障型/11.69%」「熟年型・熟年入院型/20.75%」といった結果になっています。
参照元:都民共済_割戻金について
基本コースに特約コースをプラスして保障を充実させることができる
県民共済はシンプルなコース設定・保険料であるものの、総合保障型などの基本コースに特約コースをプラスすれば、保障を充実させることも可能です。
先進医療に対応した医療特約・新がん特約・新三大疾病特約など、自身のニーズや状況に合わせた保障内容を追加できます(※埼玉県民共済は特約の取扱いなし/2024年5月時点)。
県民共済に加入するデメリットと注意点は?
県民共済にはメリットがある一方で、デメリットも存在します。主なデメリットや注意点は、以下の通りです。
保障期間が最長85歳までで終身保障がない
手術や入院をする確率は、年齢が高くなるにつれて高まります。また入院期間も、年齢が高いほうが長くなるのが一般的です。
県民共済は、保障期間が最長85歳までと限定的であり、終身保障プランはありません。保険が切れた85歳以降に手術や入院をした場合、公的な医療保険でカバーできなかった費用は預貯金など自己資金から支払わなければいけない点は大きなデメリットといえるでしょう。
70歳以降に新たに県民共済に加入することはできない
総合保障型や入院保障型などのプランは、65歳になると、解約を申し出なければ「自動的に熟年型のプラン」に切り替わります。熟年型のプランは、最長で85歳まで継続されるものの、新規加入できる上限年齢は基本的に69歳です。
70歳以降に「また県民共済に加入したい」と思っても、加入できないのが実情です。
県民共済だけで手厚い保障を構築することはできない
たとえば、総合保障型で最も手厚い保障内容の「総合保障4型(掛け金:月額4,000円)」を選んでも、死亡時の保障は最大で「交通事故/2,000万円(18歳~60歳の場合)」になります。
病死の場合には800万円と、小さな子どもがいる家庭などでは、県民共済の死亡保障だけでは足りない可能性もあるでしょう。
60歳を過ぎると保障される金額が減る
「総合保障4型(掛け金:月額4,000円)」を例に挙げると、交通事故による死亡保障は18歳~60歳の場合に2,000万円であるものの、60歳以降は1,400万円と減ってしまいます。
さらに、最大でも85歳で保障が終了する点にも注意が必要です。年齢が高くなっても保障してほしい人にとって、デメリットだといえます。
医療保険に加入するメリットは
ここまでは、県民共済に関するメリット・デメリットについて解説しました。対する「医療保険」に加入するメリットは、以下の通りです。
種類が豊富でカスタマイズしやすい
医療保険は、商品の種類が豊富であり、目的や状況に応じてカスタマイズしやすいことが特徴です。基本的なプランはもとより、追加で選べる特約の内容もバラエティーに富んでいます。
県民共済のプランでは過不足がある人は、種類が豊富で自由度の高い「民間の医療保険」を検討する価値があるでしょう。
定額医療保険の中にはシンプルで割安なものも
定額医療保険とは、保障金額が決まっている医療保険のことです。
(例:入院時には、1日1万円を支給)
また定額医療保険には、期間が決まった定期タイプと、一生保障される終身タイプが存在します。定期タイプには、県民共済と同様にシンプルなプランの商品もあり、サービスによっては県民共済より割安なケースもあります。
終身タイプの医療保険もある
県民共済の場合、どのプランや特約を選んでも、85歳までには必ず保障が終わることが特徴です。医療保険の場合には、一生涯において保障が続く「終身タイプ」のサービスも存在します。
終身タイプに加入できれば、一生涯保障を受けられるのはもちろんのこと、健康状態の悪化などから保険に加入できなくなる心配もありません。
終身医療保険は保険料が生涯変わらない
終身医療保険を選んだ場合、定期医療保険とは異なり「途中で保険料がアップする」心配はありません。県民共済も、保険料はずっと変わらないものの、最大でも85歳には保障が終了します。
医療保険の場合には、保険料が生涯において変わらず保障も死ぬまでつづく「終身タイプ」を選べるため、老後の医療費が気になる人も安心です。
医療保険に加入するデメリットと注意点は?
医療保険にはメリットが存在する一方で、デメリットも存在します。医療保険に加入する主なデメリットと注意点は、以下の通りです。
保障を手厚くすると、その分保険料も高くなる
医療保険は種類が豊富でカスタマイズしやすく、特約も自由に選べるなど、柔軟性が高いことが特徴です。しかし保障を充実させすぎると、保険料は当然ながら高くなります。
医療保険を選ぶ際には、本当に必要な保障内容を見極めたうえで、サービスを厳選すると良いでしょう。最初から(自分にとって)余分な保障や特約がついている商品もあるため、注意が必要です。
選択肢が多い分、迷う人も多い
医療保険は各社から多様なサービスがリリースされており、バラエティーに富む分、選択肢が多くなります。多くの商品から厳選する際に、「どういった医療保険を選べば良いか?」と悩む事例も見受けられます。
多くの選択肢から最適な医療保険を選びたい場合に、保険の専門家に相談したり、比較サイトなどを参考にすると良いでしょう。
健康状態などに応じて保険料が計算される
医療保険の多くは、本人の状況に応じて支払う保険料が計算されます。
【本人の状況(例)】
- 年齢
- 健康状態(病歴・持病・服薬などの有無)
- 喫煙の有無
- BMI
基本的に保険料は、若くて健康な人ほど安くなる傾向にあります。年齢が高く健康状態も悪い場合には、保険料がかなりの割高になる可能性もあるでしょう。
定期医療保険には更新があり、更新時には保険料が上がる
保障期間が定められた定期医療保険は、数年ごとに実施される「保険の更新時」に、以前よりも保険料が上がるケースが一般的です。
保険期間が満了し、同じ保険に再度加入したい場合や、既存の定期医療保険を解約し、別の医療保険に加入しようと思った場合に、健康状態によっては新規で加入できない可能性も考えられます。
終身医療保険は見直しがしにくい
就職や結婚など、ライフステージの変化に伴い、必要な保障内容は変化します。また医療技術の進歩によって、契約時の内容では「最新の医療技術が保障対象外」になることもあるでしょう。
しかし終身医療保険を見直すと、今まで定期保険よりも割高な保険料を支払うことで得ていた、「一生涯保障が続く」「将来の保険料負担を軽減する」などのメリットが活かせなくなってしまいます。そのため、「損をするので見直しにくい」と感じる人も少なくないようです。
複数の保険に加入する場合は保険の重複に要注意
医療保険・がん保険・生命保険を別々に契約するなど、複数の保険に加入する人もいるでしょう。複数の保険に加入すると、保障内容が重複するケースも往々にして見受けられます。
また保障内容の重複が原因で、家計を圧迫することもあります。複数の保険に加入する場合には、個々の保障内容を精査し、重複を防止する姿勢が大切です。
県民共済はどんな人におすすめ?
県民共済には、「シンプルなプラン設定」「一律の保険料」「保障が最大でも85歳まで」といった特徴があります。そのため、以下のような状況や考えをもつ人におすすめです。
- ある程度の貯蓄がある(県民共済で保障できない部分をカバー)
- 正社員など、手厚い社会保障や企業保障がある
- シンプルな保障で十分と考える
また持病があり、一般的な医療保険に加入できない人や、加入できても保険料が割高になる人にも向くでしょう。(※正しく健康状態を告知することは必須です)
医療保険や生命保険も検討したほうが良い人の特徴は?
民間の医療保険や生命保険は、「種類が豊富」「人によって保険料が異なる」「定期保険/終身保険から選べる」などの特徴があります。そのため、以下のような人におすすめです。
- 子どもがいるなど、手厚い保障が必要な人
- 終身保険も検討したい人
- 県民共済だと保障に過不足がある人
県民共済で加入できない健康状態の人も、告知条件がゆるいタイプの保険を選べば加入できる可能性があります。シンプルなプランで良い人も、県民共済より安い医療保険・生命保険があれば、検討の余地があるでしょう。
県民共済と医療保険を比較し、必要に応じて併用しよう
県民共済と医療保険は別物であり、それぞれメリット・デメリットが存在します。両者で迷う場合には、自身の目的や状況を踏まえ、必要な内容を選ぶことが大切です。また県民共済と医療保険の良さを考慮し、併用するケースも見受けられます。
もしものケガや病気に備え、自身に合った方法を精査し、適切なサービスに加入すると良いでしょう。