この記事では三大疾病の特徴について紹介しています。三大疾病のリスクや事前に民間の医療保険へ加入する必要性、よくある質問も紹介しているので、手早く知りたい人におすすめです。
三大疾病はがん・心疾患・脳血管疾患のことを指す
三大疾病は日本人の死因上位にランキングされる最も深刻な病気です。
日本人の死因割合の上位を占める
三大疾病とは悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患を指します。
厚生労働省の「令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況」によれば、三大疾病だけで日本人の死因の約50%を占めていると報告しています。
三大疾病はいずれも死に至る可能性の高い病気であり、早期に発見できたら効果的な治療を受けることが大切です。
出典:厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況」
がん(悪性新生物)とは
悪性新生物とは悪性腫瘍(がん)を指します。日本人の死因トップで、人体を構成する細胞が何らか原因で変異して増殖、正常な組織を破壊していく病気です。
がんの進行を示す度合いは「ステージ」と呼ばれており、基本的にステージ0~4の5段階に分かれています。ステージ0が最も症状が軽く(初期のがん)、ステージ4が最も進行してしまった状態のがんです。
有効な治療法は主に次の4種類があります。
治療法 | 内容 |
---|---|
手術療法 | 悪性新生物の組織を外科的な手術で取り除く方法。 |
薬物療法 | 抗がん剤、ホルモン剤等の薬物を使用する治療方法。 副作用を伴う。 |
放射線療法 | 悪性新生物の組織に放射線を照射し治療する方法。 |
免疫療法 | 免疫細胞を活性化させる物質の投与し、免疫力で がん細胞を治療する方法。 |
参照:国立研究開発法人国立がん研究センター
心疾患とは
心疾患とは脈の乱れを起こす不整脈、先天性の心臓病、心筋・心膜の病気等の総称です。
その中でも心筋梗塞は、完全に血管が詰まり胸部に強烈な痛みを生じ、最悪の場合は死にいたる危険な病気です。日本人の死因第2位となっています。
有効な治療法は主に次の3種類があります。
治療法 | 内容 |
---|---|
薬物療法 | 硝酸薬、ベータ遮断薬、カルシウム拮抗薬等を利用し血管を拡張、 血管に詰まっている血栓を溶かす方法。初期の心筋梗塞、狭心症の 治療に用いられる。 |
カテーテル療法 | 血管の狭窄、閉塞部分にカテーテルを用い、血管内の障害を取り除き、 血流の回復を行う方法。 |
手術療法 | 外科手術を行い血管の狭窄、閉塞による心筋の壊死を防止する方法。 |
参照:社会医療法人 三栄会
脳血管疾患とは
脳血管疾患とは、脳の血管に何らかの原因でトラブルが起き、脳細胞の障害が発生する病気の総称です。
特に脳梗塞は脳の血管が狭窄・閉塞し、血液が脳へ流れなくなり、脳が壊死または壊死に近い状態となります。症状も深刻で片麻痺、意識障害、最悪の場合は死に至ります。
有効な治療法は主に次の3種類があります。
治療法 | 内容 |
---|---|
薬物療法 | 抗血小板剤をはじめ血栓を溶かす薬剤、血液の凝固を抑える 薬剤等の治療が行われる。 |
リハビリテーション | 言語障害や手足の麻痺等が認められた場合、その機能を回復 させる目的として言語療法・作業療法・理学療法が行われる。 |
手術療法 | 厚くなってしまった血管内の内壁を切除する手術や、狭窄または 閉塞した血管を他の血管につなぐバイパス手術等を行う。 |
参照:金沢脳神経外科病院
参照:香川県立中央病院
三大疾病のために民間の医療保険は必要?
三大疾病になったとき有効な治療を受けるため、民間の医療保険でサポートを厚くしておいた方が良いでしょう。
民間の医療保険は任意保険
生命保険会社の販売する医療保険に入るかどうかは個人の自由です。貯蓄が潤沢にあり医療費の負担を十分賄えるなら、無理に民間の医療保険へ加入する必要はありません。
しかし、民間の医療保険に入れば、充実した金銭的サポートが得られるので、家計の負担を軽減しつつ安心して治療に専念できます。
民間の医療保険は公的医療保険をカバーする存在
公的医療保険は基本的に誰もが加入しなければいけません。公的医療保険で適用される医療サービスは「保険診療」と呼ばれ、原則として3割を自己負担すれば質の高い医療が受けられます。
ただし、保険診療の3割負担分や保険診療外のサービス費用、交通費等は自分で支払う必要があります。このような公的医療保険で適用されない費用負担をカバーするのが、民間の医療保険の役割です。
民間の医療保険ではいろいろなサポートが期待できる
三大疾病は深刻な病気ですが、民間の医療保険に加入していれば三大疾病の治療に対し、一時金や入院保障が無制限になる等の金銭的サポートが適用されます。
三大疾病発症時に一時金?
民間の医療保険やがん保険の中には基本保障または特約で、三大疾病になったときに多額の一時金が受け取れる商品も販売されています。
一時金を受け取るには所定の条件へ合致していなければいけません。ただし、悪性新生物(がん)に関する一時金では、がんと医師から診断確定されただけで50万円~300万円が給付されます。
治療を受ける早い段階から、まとまったお金が受け取れるので安心して治療に専念できるはずです。
入院保障が無制限になる
医療保険やがん保険では三大疾病で入院した場合、入院日数が無制限保障となる商品もあります。通常の入院給付金の場合、1入院の支払限度日数は30日型・60日型・120日型と設定されている場合が多いです。
しかし、無制限保障ならば支払限度日数を気にせず、入院保障が受けられます。また、再入院を何度繰り返しても、問題なく給付金が受け取れるので安心です。
入院日数の無制限保障と、1入院の支払限度日数がある保障を比較すると次の通りです。
入院日数 | 無制限 | 支払限度日数あり |
---|---|---|
1入院(入院1回分) | 何日入院しても入院した日数分の入院給付金が受け取れる。 | 1回の入院につき入院給付金を受け取れる日数が限定されている。 (例)1回の入院支払限度日数 ・30日型:入院給付金30日分が給付上限 ・60日型:入院給付金60日分が給付上限 ・120日型:入院給付金120日分が給付上限 |
再入院 | 前回の入院と同様に、何日入院しても入院した日数分の入院給付金が受け取れる。 | 退院した翌日から180日以内に同じ病気やケガで再入院した場合、前回の入院支払限度日数が反映される。 (例)前回30日間入院し、同じ病気やケガで180日以内に再入院 ・30日型:入院給付金受け取れず ・60日型:入院給付金30日分が給付上限 ・120日型:入院給付金90日分が給付上限 一方、次のようなケースでは前回とは別の新たな1入院として入院支払限度日数がカウントされる。 ・退院した翌日から180日経過後に同じ病気やケガで再入院した ・別の病気やケガで入院した |
保険料も免除
三大疾病になれば以後の保険料の払い込みが免除される保険商品は多いです(保険料払込免除)。医療保険やがん保険の他に死亡保険等でも用意されている場合があります。
収入のある人が三大疾病で入院すると、医療費の支出以外に家族の生活費の不安も抱くはずです。しかし、保険料が免除された分、家計の負担を軽減できます。
先進医療も一部の自由診療も保障
最先端の医療サービスである「先進医療」の技術料は全額自己負担となり、費用が数百万に上るケースもあります。しかし、先進医療特約を付加していれば、ほとんどの先進医療が保障対象です。
一方、自由診療とは歯科矯正・美容医療から国内未承認の治療技術まで、公的保険適用外の医療サービス全般を指します。
自由診療は民間の医療保険でも保障対象外とされてきました。ただし、最近ではがん保険の一部で、所定の自由診療をサポートする商品が販売されています。
三大疾病への備えはいつから始めた方が良い?
三大疾病のリスクは中高年になると急激に高まります。なるべく健康なうちに備えておいた方が良いでしょう。
50代以降に三大疾病のリスクが増す
ストレスや喫煙・暴飲暴食等、日々の生活習慣の乱れが蓄積し、50代以降に三大疾病のリスクが増していきます。なるべく40代までには、三大疾病を手厚くサポートする保険へ加入した方が良いでしょう。
中高年以降が加入する医療保険でおすすめなのは、終身タイプです。健康なうちに加入しておけば、その後に三大疾病を発症しても、原則として一生涯のサポートが期待できます。
既に医療保険へ加入している人も見直しを
医療保険やがん保険へ既に加入中であっても、三大疾病が手厚くサポートされた内容なのか、慎重にチェックしましょう。
三大疾病を発症し入院・治療が必要となった場合は、通常のケガ・病気と同じように入院給付金や手術給付金は受け取れます。
しかし、三大疾病を発症すると長期入院や再入院が必要となるケースは多いです。加入中の保険商品で長期入院・再入院を十分カバーできるのか、保険担当者に相談する等して保険見直しを検討した方が無難です。
三大疾病へ備える際の注意点
三大疾病のサポートが充実した医療保険を見つけても、保険加入前に確認するべき点があります。
保険契約の開始時点では保障されない場合もある
医療保険にがん特約を付加した場合や、がん保険に加入した場合、がんに関しては90日間(約3ヶ月)の免責期間を定めている場合がほとんどです。
なぜなら、がんを発症していても自覚症状がないケースも多いので、生命保険会社側は契約後しばらく契約者の様子を観察したいためです。
免責期間を無事経過すれば保障の効力が発生するものの、期間内にがんの発症が認められた場合、がん保険・がん特約のサポートは受けられません。
対象となる疾病をよく確認する
悪性新生物(がん)は死亡リスクの高い病気ですが、上皮内新生物(初期のがん)は死亡リスクが低く、この段階で十分な治療を受ければ完治する確率が高いといわれています。
そのため、初期のがんは治療保障の対象外となるおそれがあります。初期のがんにも十分なサポートを受けたいなら、初期のがんまで保障範囲となる特約を付加した方が良いでしょう。
なお、最近では悪性新生物(がん)・上皮内新生物(初期のがん)も同額で保障対象となる、医療保険・がん保険が販売されています。
三大疾病には公的医療保険が適用される
三大疾病治療の大部分には公的な健康保険が適用されます。どのような治療法が対象なのかみてみましょう。
保険適用されるがん(悪性新生物)の治療法
手術療法・放射線療法・薬物療法・免疫療法のほとんどが保険診療の対象となります。
保険診療が適用されるがん治療の自己負担例をあげてみましょう。
治療法 | 費用(3割自己負担分) |
---|---|
内視鏡的粘膜切除術(入院5日含む) | 約8万円 |
胸腔鏡手術(入院10日含む) | 約50万円 |
放射線化学療法(入院20日含む) | 約28万円 |
抗がん剤単独療法(年間) | 6万〜11万円 |
参照:医療法人 笠寺病院
参照:多根総合病院
参照:国立がん研究センター中央病院
保険適用される心疾患の治療法
薬物療法、カテーテル療法、手術療法のほとんどが保険診療の対象です。
保険診療が適用される心疾患治療の自己負担例をあげてみましょう。
治療法 | 費用(3割自己負担分) |
---|---|
冠動脈バイパス術 | 約95万円 |
弁膜症手術(人工弁置換術) | 約135万円 |
末梢血管手術(カテーテル) | 約25万円 |
シャント手術(人工血管使用) | 約35万円 |
参照:名古屋徳洲会総合病院
保険適用される脳血管疾患の治療法
治療法 | 費用(3割自己負担分) |
---|---|
脳梗塞リハビリ(入院30日) | 約15万円 |
t-PA血栓溶解療法(入院10日) | 約30万円 |
ステント手術(入院5日) | 約50万円 |
参照:リハビリテーション名古屋
参照:公益財団法人筑波メディカルセンター
公的医療保険の範囲外の医療サービスとは?
公的医療保険に加入していても、医療サービスによっては適用範囲外となるものもあります。
差額ベッド代は基本的に全額自己負担
病院に入院する場合、保険診療が適用される病室(いわゆる大部屋)だけでなく、より快適に入院するための有料病室も用意されています。
有料病室の利用費は「差額ベッド代」と呼ばれ、公的医療保険の対象外となり基本的に利用費全額を自己負担しなければいけません。
1日の平均的な差額ベッド代は6,000円と言われています。しかし、各病院が自由に金額を設定できるので、費用の差は大きくなる傾向があります。差額ベッド代が気になるときは前もって入院する病院へ確認しておきましょう。
先進医療費は全額自己負担
先進医療は技術料が公的医療保険の対象外となり、技術料全額を自己負担しなければいけません。
負担する技術料分だけでも数百万円に上る場合があり、例えばがん治療に大きな効果があるといわれている陽子線治療・重粒子線治療の費用は次の通りです。
先進医療 | 技術料(1回分) |
---|---|
陽子線治療 | 約264万円 |
重粒子線治療 | 約318万円 |
参照:厚生労働省「令和3年6月30日時点における先進医療に係る費用」にて試算
ただし、先進医療に該当する医療技術は、近い将来に保険適用の医療行為として認められるケースもあります。
自由診療費は全額自己負担
自由診療は公的医療保険が適用されない歯科矯正・美容医療、国内未承認の医療技術も含めた医療サービスです。
自由診療を受けた場合、本来保険診療となる部分も全額自己負担となっています。保険診療として保険給付が認められない分、医療費負担は非常に高額となる場合があるので注意しましょう。
その他の自己負担
公的医療保険が適用されない費用として、病院へ通院する場合の交通費や医師の診断書(5,000円~10,000円程度)も、患者側で負担する必要があります。
もちろん、入院する際のパジャマ、タオル、生活必需品(歯ブラシ、歯磨き粉等)や着替えは患者側で準備しなければいけません。
三大疾病に関する質問
こちらでは、三大疾病に関するよくある質問へ回答しましょう。
七大疾病と呼ばれている病気もあるんだけど何が違うの?
中高年以降に気を付けなければいけない病気は、三大疾病だけではありません。肝硬変、糖尿病、高血圧疾患等も重大な生活習慣病といわれています。
これらの生活習慣病は三大疾病ほど死亡率は高くありませんが、長年放置すれば生命・身体に重大な影響を及ぼす病気ばかりです。
民間の医療保険の中には三大疾病に加え、他の生活習慣病の治療サポート(一時金や長期入院保障等)も厚くした商品があります。
三大疾病への備えは医療保険だけ?
最近では終身保険(死亡保険)のコースの一つとして、三大疾病を発症したら保険金が下りる等、いろいろな保険が登場しています。
死亡保険金と同額を受け取れる商品も多く、まとまって下りる保険金を利用すれば、潤沢な入院治療のための資金または家族の生活保障として役立ちます。
ただし、三大疾病保険金(給付金)として積み立てた保険金の全部を受け取ってしまうと、保険契約は消滅となり、被保険者が死亡した際に下りる死亡保険金は受け取れません。