訪問看護では公的医療保険が適応されるの?その仕組みをわかりやすく解説!

この記事では、訪問看護に公的医療保険の適用はあるのかを紹介しています。公的医療保険が適用される条件や、利用のための手続き・注意点等も紹介しているので、手早く知りたい方々におすすめです。

この記事を監修した専門家

田沼 隆浩

株式会社エコスマート 事業開発責任者
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

略歴

2004年から大手保険代理店で保険事業に従事。M&Aを中心に子会社社長などを歴任。2021年より株式会社エコスマートへ事業開発責任者として入社。保険セミナーの実績も多数あり。

訪問看護とは

訪問看護とは、看護師が看護を必要とする人の自宅等に訪問し、その人の病気や障害に応じた看護を行うサービスです。

訪問看護の仕組み

訪問看護を受けるには、まず利用したい人が訪問看護ステーションや主治医に相談します。その後、主治医が訪問看護指示書を発行し、訪問看護ステーションの担当者が重要な情報を説明します。利用希望者が了承した後、サービス契約が締結されます。

契約締結後、利用者のニーズに合わせたプランで看護師の訪問サービスが開始されます。利用者の症状に合わせ、主治医やケアマネージャーとの協議のもとで、サービスの調整等も可能です。

訪問看護で受けられるサービス

訪問看護では主に下表のようなサービスが受けられます。

訪問看護サービス内容
療養上のサポート身体の清拭・洗髪、入浴介助、食事・排せつ等の介助・指導
医師の指示による医療処置主治医の指示に基づく医療処置
病状の観察利用者の病気・障害の状態や、血圧・体温・脈拍等を確認
医療機器の管理在宅酸素、人工呼吸器等の管理
ターミナルケア利用者が末期がんである等、終末期でも自宅で過ごせるよう
適切なサポートを行う
床ずれ予防処置利用者の床ずれ防止の措置や指導
リハビリテーション在宅で関節が動かしにくくなった状態(拘縮)からの機能回復訓練
認知症ケア認知症のある利用者の事故防止等、介護の相談・指導
家族への介護支援・相談介護方法の指導や悩み・相談対応
介護予防運動機能低下を防ぐアドバイス等

参照:公益社団法人 岡山看護協会

訪問看護を提供する医療機関等について

訪問看護を提供する事業所は大きく5種類に分かれます。

提供事業所内容
訪問看護ステーション保健師や看護師が管理者となり運営する事業所。
訪問看護指示書の交付でサービスを提供する。
保険医療機関病院や診療所が訪問看護部門等を設け、訪問看護サービスを
行う。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護要介護者に対し、定期巡回訪問介護・訪問看護を一体的に
24時間体制で提供する、介護保険制度の地域密着型サービス。
看護小規模多機能型居宅介護要介護者に対し、訪問介護・訪問看護・通所介護・宿泊を
複合させた介護保険制度の地域密着型サービス。
民間企業の訪問看護民間企業等の実施する医療保険制度・介護保険制度外の
訪問看護サービス。

参照:公益財団法人 日本訪問看護財団

訪問看護は公的医療保険・介護保険が適用される

利用者の状況に応じ、訪問看護には公的医療保険・公的介護保険のいずれかが適用されます。

公的医療保険・公的介護保険どちらを適用?

訪問看護は公的医療保険・公的介護保険のいずれかが適用され、どちらが適用されるかで料金形態・利用回数等も違ってきます。

公的介護保険が適用される訪問看護は、要支援・要介護認定を受けた人が対象で、ケアマネージャーの作成するケアプラン(例:居宅サービス計画、施設サービス計画等)に沿ってサービスが提供されます。ただし、要支援・要介護者だからといって一律に公的介護保険が適用されるわけではありません。

急に症状が悪化し、医師から特別訪問看護指示書が交付された場合、一時的に公的医療保険が適用されます。その他、公的介護保険対象外の利用者にも公的医療保険で対応します。

40歳未満は公的医療保険が適用される

40歳未満の方々が訪問看護を希望するならば医師に相談する必要があります。そして医師がその必要性を判断すれば訪問看護指示書が発行されます。

その後、訪問看護を提供する事業所と契約し、公的医療保険を適用した訪問サービスが利用可能です。公的医療保険で対応する場合、基本的に週3回までが上限で、1回の訪問時間は30分~90分程度となります。

公的な訪問看護以上の利用回数を希望する場合、自費で訪問サービスの利用ができます。

40~64歳は条件によって保険適用が異なる

40歳~64歳の方々が訪問看護を利用する場合、まず特定疾病に該当しているか否かで判断されます。

特定疾病とは加齢に伴い生じた心身の変化に起因し、要介護状態の原因である心身障害が生じたと認められる疾病です。厚生労働省では16の疾病を指定しています。

  1. がん(医師が医学的知見に基づき、回復の見込みがない状態と判断した場合)
  2. 関節リウマチ
  3. 筋萎縮性側索硬化症
  4. 後縦靱帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 初老期における認知症
  7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症・パーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患
  16. 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

出典:厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」

上記の16疾病に該当しない場合、40歳未満の方々と同様に公的医療保険が適用されます。なお特定疾病に該当し、かつ要支援・要介護を受けた利用者は公的介護保険で対応します。

65歳以上は公的介護保険が適用される

65歳以上の方々も医師から訪問看護指示書が発行された場合、基本的に公的医療保険が適用されます。ただし、要支援・要介護認定を受けた場合は基本的に公的介護保険で対応します。

公的介護保険を利用した訪問看護ならば利用回数の制限はありません。ただし、1回の訪問時間はケアプランに従い20分未満・30分未満・60分未満・90分未満の4区分に分かれます。

訪問看護の利用回数・時間および自己負担割合の比較

訪問看護は公的医療保険が適用されるか、それとも公的介護保険が適用されるかで利用回数・時間・自己負担割合はそれぞれ異なります。下表をご覧ください。

項目公的医療保険公的介護保険
利用回数原則:週に1~3回

※特定疾病に該当し医師が必要性を認めた場合、週4回以上の利用も可
回数制限なし

※ケアプランで定めた回数に従う
利用時間(1回)30分~90分

※特に重い病気・症状の場合、医師が必要性を認めた上で、週1回まで90分を超える長時間の利用も可
20分未満・30分未満・60分未満・90分未満のいずれか
自己負担割合年齢によって自己負担割合は異なる

●義務教育就学前:月額2割負担
●義務教育就学後~70歳未満:月額3割負担
●70歳~75歳未満:月額2割負担(現役並み所得者:3割)
●75歳以上:月額1割負担(現役並み所得者:3割)
基本的に自己負担割合は月額の1割

※一定以上の所得者:2~3割負担

参照:公益財団法人 日本訪問看護財団

訪問看護を公的医療保険で利用する場合の流れ

公的医療保険による訪問看護を希望する場合は、医師から訪問看護指示書を発行してもらい、訪問看護事業者と利用契約を締結する必要があります。

STEP1:主治医に訪問看護の利用を相談する

本人や家族が、まず主治医または訪問看護ステーション等に訪問看護の必要性を相談します。

その際には本人の病状・障害等、訪問看護サービスの提供を受けるにあたって必要となる情報を伝えましょう。看護の内容・希望する訪問スケジュール等の検討・調整を行います。

ただし、訪問看護が必要かどうかは最終的に主治医が判断します。

STEP2:訪問看護指示書の発行をしてもらう

主治医が必要と判断したら、訪問看護指示書が発行されます。訪問看護指示書は公的な保険制度を利用し、訪問看護サービスを受けるとき必ず作成しなければいけません。

ただし、訪問看護指示書には有効期限があり、主治医の発行から6ヶ月間となります。

STEP3:訪問看護ステーション等の選定、利用契約締結する

訪問看護指示書が交付されたら、利用者本人・家族のニーズに合った訪問看護事業者を選びます。

選定は利用者本人・家族の自由であり、事前に相談していた訪問看護ステーション等を選んでも構いません。

希望する事業所を選んだら、 訪問看護のサービス内容や利用回数・費用等を確認したうえで、利用契約を締結します。

STEP4:訪問看護利用開始する

看護師は主治医より訪問看護指示書の発行を受け、訪問看護計画に基づいたサービスを実施します。

指示書の有効期限の到来ごとに利用者が訪問看護の継続を希望する場合、看護師から主治医に交付を依頼しましょう。

主治医は利用者のこれまでの診療結果と、看護師から提出された訪問看護計画書・訪問看護報告書を参考に、訪問看護の必要性の有無を判断します。

訪問看護で公的医療保険を適用する場合の注意点

訪問看護に公的医療保険が適用される場合、利用制限がある点に注意しましょう。

利用制限があることに注意

公的医療保険が適用される訪問看護は、公的介護保険の場合と異なり、週ごとの利用回数に明確な制限があります。1週間で3回が上限なので、利用者側が自由に回数を決められるわけではありません。

どうしても回数を増やしたい場合、自費で訪問看護を利用する必要があります。利用者の症状をよく観察し家族で相談しつつ、利用回数を超える訪問看護を依頼するか判断しましょう。

利用制限が無くなるケースとは?

公的医療保険が適用される訪問看護で、利用回数の制限がなくなるケースもあります。それは主治医から「特別訪問看護指示書」が交付された場合です。

主に利用者が次のような状態となったとき、主治医の判断により交付されます。

  • 末期の悪性腫瘍や多発性硬化症・プリオン病等、重い病気の場合
  • 利用者の容体が急に悪くなった場合
  • 利用者の病状が終末期をむかえた場合
  • 退院直後で容体をチェックしたい場合

ただし、訪問看護指示書と同一の医師による発行が必要で、医師の診療を受けた日から14日以内が有効期限です。更に原則として月1回(気管カニューレの使用や、真皮を超える床ずれのある人の場合は月2回)の交付に限定されています。

訪問看護の保険適用に関するよくある質問

こちらでは訪問看護の保険適用に関して、よくある質問をとりあげましょう。

公的医療保険と公的介護保険の併用はある?

同一の診断名(疾病・障害)の場合、公的医療保険と公的介護保険の併用は認められません。ただし、別の診断名でリハビリ・介護を受けるならば、併用が認められるケースもあります。

例えば利用者が認知症で公的介護保険による訪問看護を受けていたものの、その利用者が転倒して足を骨折、治療やリハビリが必要となり公的医療保険を利用した、という場合が該当します。

訪問看護に民間の医療保険は適用されるの?

生命保険会社が販売する医療保険の中には、在宅医療も保障対象となる商品があります。給付条件は主に次の通りです。

  • 疾病入院給付金または災害入院給付金の支払事由に該当する入院をした
  • 退院後、入院と同一の原因で1カ月の間に1回以上の在宅医療を受けた

給付内容としては主契約の入院給付金日額の〇倍、支払限度は通算〇〇カ月分という形で設定されています。