この記事では三大疾病に備えるため、民間保険へ加入する必要があるのかについて解説しています。民間保険の保障内容や注意点、よくある質問も紹介しているので手早く知りたい人におすすめです。
三大疾病とは
日本人の死因上位TOP3の病気
悪性新生物・心疾患・脳血管疾患は「三大疾病」と呼ばれ、日本人の死因の5割を占めている深刻な病気です。
出典:厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況」
死因順位 | 死亡数 | 死因割合 |
---|---|---|
1位:悪性新生物(がん) | 381,505人 | 26.5% |
2位:心疾患 | 214,710人 | 14.9% |
3位:老衰 | 152,027人 | 10.6% |
4位:脳血管疾患 | 104,595人 | 7.3% |
全体 | 1,439,856人 | 100% |
悪性新生物・心疾患・脳血管疾患はどんな特徴の病気?
三大疾病いずれも重症化すると、生命・身体に重大な影響を及ぼす事態となります。
三大疾病 | 特徴 |
---|---|
悪性新生物(がん) | 人体を構成する細胞が変異して増殖、正常な組織を破壊していく病気。 基本的にステージ0~4に区分され、ステージ4が最も重症。 |
心疾患 | 心疾患とは脈の乱れを起こす不整脈、先天性の心臓病の病気等の総称。 中でも心筋梗塞は血管が詰まり胸部に強烈な痛みを生じ、最悪の場合は 死にいたる。 |
脳血管疾患 | 脳の血管にトラブルが起き、脳細胞に障害がおきる病気。 中でも脳梗塞は脳の血管が狭窄・閉塞し、脳が壊死または壊死に近い 状態となる。 |
参照: 国立研究開発法人国立がん研究センター「がんという病気について」
参照: 国立研究開発法人国立がん研究センター「UICC TNM分類」
治療には公的医療保険が適用される?
公的医療保険が適用、原則3割負担
三大疾病には公的医療保険が適用されます。
三大疾病治療の保険診療には手術や投薬、検査、そして入院も該当します。保険診療の対象となる医療サービスは次の通りです。
保険診療 | 内容 |
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診療 | 医師による診察・検査・画像診断等を患者の身体に施し、 異常があるかどうかを判断する医療行為。 |
医薬品の支給 | 患者の治療に必要な医薬品の支給。最寄りの保険薬局で 医薬品を受け取る。 |
物品の支給 | 患者の治療のために必要なガーゼ、包帯等の給付。 |
注射、処置、手術等の治療 | 医師が必要と判断した処置や手術、注射。 患者の身体の機能を維持・回復させるための リハビリテーション等も該当。 |
入院 | 医師が患者の入院治療、看護が必要と判断した場合。 |
また三大疾病治療の一部は、保険適用外で全額自己負担となります。保険適用外となる医療サービスは次の通りです。
保険適用外の医療サービス | 内容 |
---|---|
差額ベッド代 | 「特別療養環境室」と呼ばれる有料病室の費用。 より快適な入院を送るため、患者の療養環境に配慮した設備が 整っている病室を指し、その利用は保険診療の対象外となる。 |
先進医療 | 厚生労働大臣が承認した最先端の医療技術で治療を行うサービス。 その技術料分は保険診療の対象外となる。 |
自由診療 | 国内で未承認の治療法、薬剤等を利用した医療サービス。 |
その他出費 | 三大疾病で通院治療する場合の交通費、入院する場合は 入院中の衣類・生活用品(例:タオル、歯ブラシ・歯磨き粉等)。 |
高額療養費制度で更に負担を減らせる
三大疾病の治療が長引いて治療費が高額化した場合などは、「高額療養費制度」を利用できます。
高額療養費制度は70歳未満か70歳以上かで、適用される上限額が変わってきます。
70歳未満の人の自己負担限度額
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) |
---|---|
年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
年収約770万円~約1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
年収約370万円~約770万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
~年収約370万円 | 57,600円 |
住民税非課税者 | 35,400円 |
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
70歳以上の方の自己負担限度額
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) |
---|---|
年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
年収約770万円~約1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
年収約370万円~約770万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
年収約156万円~約370万円 | 57,600円 |
II住民税非課税者 | 24,600円 |
I住民税非課税者 (年金収入80万円以下など) | 15,000円 |
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
三大疾病に備えるために民間保険は必要?
医療負担を最大限抑えるには必要
三大疾病の治療は民間保険の対象ですが、一部適用を受けられない医療サービスがあります。病気が長期化すると高額な費用がかかるため、万が一に備えて加入検討だけでもするのがおすすめです。
民間保険で抑えられる負担
民間保険では、保険診療外の医療サービスである差額ベッド代が入院保障の対象となります。
また、通院ならば交通費をカバーできる通院保障、最先端の医療である先進医療を受けたならばその技術料分も保障対象です。
そのため医療費の負担を抑えつつ、三大疾病の治療で幅広い医療サービスを利用したいなら、三大疾病を発症する前に民間保険へ加入しておいた方が良いでしょう。
三大疾病に備えられる保険
三大疾病向けの保険は2種類
三大疾病を発症し入院や通院、治療を行った場合、その金銭的サポートが受けられる保険商品として、「医療保険」「三大疾病保険」があげられます。
それぞれの特徴については次の通りです。医療保険は基本的に入院・通院・治療後に保障が受けられます。また、三大疾病保険は所定の状態に該当すれば、入院・通院・治療中でも保障が受けられます。
種類 | 保障内容 |
---|---|
医療保険 | 被保険者の病気やケガの入院・通院・治療を幅広くサポート。 三大疾病のサポートは特則が付いているか、特約を任意で追加すれば 受けられる場合が多い。 |
三大疾病保険 | 被保険者が三大疾病で所定の状態となった場合、生前に死亡保険金と同額の 特定疾病保険金が受けられる。基本的に一時金として給付される。 |
がん保険という選択肢もある
三大疾病すべてではなく、がんだけ入院・通院・治療サポートを受けたい場合、「がん保険」という商品も販売されています。
民間の医療保険の加入メリット
特約・特則で手厚いサポートを受けられる
生命保険会社が販売する医療保険では、契約時に特則が付いている場合、三大疾病の入院や治療に対して手厚いサポートを受けられます。また、特約を追加することでも同様のサポートを受けられます。
入院給付金支払が日数無制限だと特に安心
医療保険に三大疾病に関する特則(3大疾病入院支払日数無制限特則)が付いていれば、再入院を繰り返しても、入院保障を無制限で受けられます。
入院保障に支払限度日数がある場合、支払限度日数がない場合(無制限保障)とを比較してみましょう。
支払限度日数の有無 | 初回の入院 | 再入院 |
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支払限度日数がある場合 | 1回の入院につき入院給付金を受け取れる日数が限定されている。 | 退院翌日から180日以内に、同じ病気やケガで再入院すると、前回の入院支払限度日数が反映される。 ただし、次のようなケースでは前回の入院とは別に、新たな入院として入院支払限度日数がカウントされる。 ・退院翌日から180日経過後に同じ病気やケガで再入院 ・別の病気やケガで入院 |
支払限度日数がない場合 (無制限保障) | 1回入院で何日入院しても、入院した日数分の入院給付金が受け取れる。 | 前回の入院と同様に、何日入院しても入院した日数分の入院給付金が受け取れる。 |
無制限保障ならば何回再入院しても、入院した日数分の入院給付金が受け取れるので安心です。
一方、入院保障に支払限度日数があると、例えば1入院60日が支払限度日数と決められている場合、1回の入院で60日分を限度に入院給付金が受け取れます。
ただし、60日間入院し退院翌日から180日以内に同じ病気やケガで再入院すると、前回の入院支払限度日数が反映されてしまい、2回目の入院では入院給付金が受け取れない事態となります。
まとまった一時金が受け取れる商品もある
特約(三大疾病一時金特約)を追加することで、一時金を受け取ることも可能です。
受け取れる一時金額は保険商品ごとに異なりますが、契約時に概ね30万円〜200万円まで設定可能です。一時金は入院日数に左右されず満額が受け取れます。
三大疾病保険の加入メリット
三大疾病と死亡に備えられる
三大疾病保険は、三大疾病で所定の状態になると一時金が受け取れ、また死亡・高度障害状態になった場合でも保険金が受け取れます。ただし保険金の支払いはいずれか1回限りです。
保険期間内に三大疾病を発症し所定の条件に合致した場合は、死亡保険金と同額の特定疾病保険金が支払われます。
三大疾病 | 一般的な支払い条件 |
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悪性新生物(がん) | がん保障開始後、初めて医師によってがんの診断確定を受けた |
心疾患 | 契約後に心疾患となり、医師の診断を受けた初診日から60日以上 労働の制限された状態が続いたと医師から診断された |
脳血管疾患 | 契約後に脳血管疾患になり、医師の診療を受けた初診日から60日以上、 言語障害、麻痺等の後遺症が続いたと医師から診断された |
支払い条件となる被保険者の状態については、生命保険会社によって差異があります。保険請求前に、生命保険会社から取得した資料や保険担当者等へ確認しておきましょう。
三大疾病保険金が下りれば多額の一時金を受け取れる
三大疾病で所定の条件に合致したとき、特定疾病保険金が受け取れます。医療保険の場合は入院後や通院後、治療を受けた後に請求できる給付金がほとんどです。
しかし、特定疾病保障保険の場合は所定の条件にさえ合致すると、入院・通院・治療中であっても、多額の一時金が受け取れます。
契約内容によっては数百万円もの保険金を受け取れます。
受け取った保険金は使途が自由なので、公的医療保険が適用されない自由診療に充てても、家族の生活資金にしても構いません。
民間保険の注意点
一時金の給付条件に注意
三大疾病保険で受け取れる保険金は1回限定です。特定疾病保険金を受け取ってしまうと保険契約は終了となります。
一方、医療保険に三大疾病一時金特約を付加した場合、保険商品によって、給付条件が次のように異なります。
- 保険期間中、一時金の給付は1回限定
- 保険期間中、何回でも受け取れるが年1回のみ請求可
条件はそれぞれ違うので2回目の給付を希望する人は、保険会社へ一時金を請求する前に、給付内容をよく確認しておきましょう。
がんには免責期間がある
がんに関する保障では、各生命保険会社とも「免責期間」を設けているケースが多いです。免責期間があると、概ね保険契約成立後90日間は保障を受けられません。
契約後、免責期間中にがんの発症が判明すると、がんの治療サポートは受けられないので注意が必要です。
三大疾病に備えるための民間保険についてのよくある質問
その他の病気に備えたい場合はどうするべき?
三大疾病は深刻な病気ですが、その他にも糖尿病や高血圧性疾患、肝硬変、慢性腎臓病のように注意するべき病気は多いです。
生命保険会社の中には、これらの病気も含め「七大生活習慣病」という形で、保障対象を拡大している保険商品もあります。保障内容としては長期入院・一時金の保障等が用意されています。三大疾病以外の病気にも備えたいときは、このような保障対象を拡大している保険への加入を検討するとよいでしょう。
会社の健康保険の他に個人で民間保険に加入した方が良い?
給与所得者の健康保険は、入院や治療に手厚いサポートとなっている場合が多く、生活保障制度である「傷病手当金」も利用できます。
まず、お勤め先のサポート内容を確認し、保障をもっと厚くした方が良いと感じたら、個人での民間保険の加入を検討しましょう。