終身医療保険とは、一生涯において保障が続く医療保険のことです。
医療保険には終身型と定期型の2種類があり、保障内容や保険料に違いがあるため、それぞれの違いを理解した上で選ぶ必要があります。
そこで当記事では、終身医療保険への加入を検討する人に向けて、終身医療保険の特徴やメリット・デメリットなどを解説します。終身医療保険に加入すべきかと迷うケースや、終身医療保険への理解を深めたい場合には、ぜひ当記事をお役立てください。
終身医療保険の特徴
まずは、医療保険の特徴について知ることが大切です。医療保険には、支払い方法として「終身払い」と「短期払い」があり、払戻金の有無によって「掛け捨て型」と「貯蓄型」が存在します。まずは、それぞれの特徴を解説します。
支払い方法は「終身払い」と「短期払い」の2種類ある
終身医療保険の支払い方法には、終身払いと短期払いが存在します。終身払いの保険料を支払う期間は一生涯であり、短期払いは一定期間までです。保障内容が同じであれば、毎月の保険料は「終身払い」のほうが安価な傾向にあります。
終身医療保険における「終身払い」と「短期払い」の主な違い
終身払い | 短期払い | |
---|---|---|
保険料の支払い期間 | 一生涯続く | 一定期間で終了 |
保障期間 | 一生涯続く | 一生涯続く |
毎月の保険料 | 一定 | 一定 |
毎月の保険料を比較すると、同じ保障内容であれば、短期払いのほうが高いです。しかし、短期払いの終身医療保険は一定期間で終了し、保障は一生涯続きます。保険料を一生涯払い続ける必要がないため、支払い期間終了後の負担を軽減できます。
払戻金の有無によって「掛け捨て型」と「貯蓄型」がある
終身医療保険には、掛け捨て型と貯蓄型があり、昨今では「掛け捨て型」が主流です。掛け捨て型は、契約期間中に「保険料支払いに該当する出来事」がなければ、保険料が戻ってこない仕組みです。貯蓄型よりもリーズナブルな保険料で、万が一に備えられます。
一方、「貯蓄型」の商品数は少ないものの、入院や手術の出費に備えながら、将来必要になる資金を積み立てる目的で利用するケースが多いでしょう。貯蓄型で貯めたお金は満期の際に受け取れるほか、途中で解約した場合は解約返戻金を受け取れます。しかし、解約したタイミングによっては、払い込んだ保険料より少額になる可能性があります。解約返戻金を受け取れる時期や金額は、保険商品によって異なるため、契約時に詳細を確認することが大切です。
終身医療保険に加入するメリット
終身医療保険への加入を判断する際には、加入するメリットについて考えると良いでしょう。終身医療保険に加入する主なメリットは、以下の通りです。
保障が一生涯続く
終身医療保険の大きなメリットは、一度加入すれば、医療保障が一生涯において続くことです。一般的に年齢が上がると、病気のリスクが高まるため、そもそも医療保険に加入できなくなるケースも見受けられます。終身医療保険であれば、一度契約してしまえば、高齢になり持病を抱えたとしても医療保障を受けられます。そのため、年齢が上がっても保障が切れる心配もなく、常に病気やケガに備えられるでしょう。
対する「保障期間が決められている定期型」の医療保険は、当然ながら期限に達すれば、保障が切れてしまいます。保険が切れたタイミングで「別の医療保険に加入したい」と思っても、年齢や持病の関係で加入できないことも考えられます。
保険料が加入時のまま
終身医療保険の場合には、加入時の保険料が一生涯において適用されるため、将来的な保険料の値上がりを心配せずに過ごせます。保険料がずっと加入時のままであれば、高齢時の負担を減らせる点はもとより、将来的な保険料支払いの計画もたてやすくなるでしょう。
定期医療保険であれば、更新する度に保険料が見直されることから、月日が経過し高齢になるにつれ保険料が高くなる傾向にあります。その場合、「高齢で収入が減ったにもかかわらず、保険料が増えるから不安だ」と思う可能性もあるでしょう。
また、終身医療保険の短期払いを選べば、保険料を一定期間までに払い終えられるため、高齢になった際の保険料負担を軽減できます。
終身医療保険のデメリット
終身医療保険にはメリットが存在する一方で、デメリットも存在します。終身医療保険に加入した場合に、考えられるデメリットは以下の通りです。
若い時の保険料が高い
終身医療保険と定期医療保険を比較した場合、同じ保障内容であれば、加入時の保険料は「定期医療保険」のほうが安価です。なぜなら、定期医療保険は、保険期間終了後のより高齢になった際のリスクを考慮せず保険料を設定しているからです。
終身型の医療保険の場合には、加入者が高齢になったときを想定し、病気やケガのリスクも含めて保険料を設定しています。そのため、年齢が若いうちは、終身医療保険の保険料に対して割高に感じる人もいるでしょう。
また、終身医療保険を選ぶ場合には、保険料の支払いが家計を圧迫しないよう注意も必要です。特に収入が低くて若い人は、現状の家計状況や将来的なプランを考えた上で、終身医療保険が必要か否かを判断すると良いでしょう。
保険内容の見直しができない
終身医療保険に限らず、保険は「ライフステージ」に合わせて保障内容を見直すことが大切です。終身医療保険の場合には、一度加入すると保障が一生涯続くため、見直しをする機会がありません。例えば、子どもが独立するまでは保障内容を手厚くし、子どもの独立後は保障内容を軽くするなどの柔軟な対応ができないでしょう。
また、保険の見直しは、時代の変化に適応する目的もあります。例えば、現状のルールでは「先進医療の技術料」は公的医療保険の対象外であり、全額自己負担です。そのため、先進医療を受けたい場合、民間の医療保険で備える人もいるでしょう。しかし、将来的には「先進医療の技術料」が、公的医療保険の対象になる可能性もゼロではありません。
終身医療保険がおすすめの人は?
終身医療保険への加入がおすすめな人は、どういった特徴をもつのでしょうか。以下に、終身医療保険がおすすめな人の特徴を紹介します。
老後の生活に備えたい人
定年退職やリタイアなどで仕事を辞めたあとは、収入が大きく減る可能性もあるでしょう。定職もなく収入が大幅に減った状態であれば、毎月の保険料を払い続けることが、大きな負担になるかもしれません。
終身医療保険の「短期払い」を選べば、保険料の支払いは一定の年齢で終了することから、老後における保険料の負担や不安を軽減できるでしょう。老後の保険料負担を抑えながら、必要な医療保障も一生涯において得られます。老後の「収入減による保険料負担の圧迫」を心配するものの、医療保障も受け続けたいと考える場合には、終身医療保険の短期払いを検討すると良いでしょう。
子どもがいる人
独立前の子どもがいる人は、親である自身の万が一に備え、終身医療保険に加入しておくと良いでしょう。貯蓄型の終身医療保険は医療保障だけでなく「貯蓄性」もあるため、いざという時には、生活費や教育費にも充当できます。一定期間が経過していれば、解約した際に、解約返戻金としてまとまったお金を受け取れます。
また、終身医療保険には、子どもを被保険者にできる商品も存在します。子どもを被保険者にすれば、毎月の保険料は「若い年齢」で設定されるため、保険料の支払いを安く抑えやすくなります。独立前に子どもを被保険者として終身医療保険に加入してあげれば、子どもが将来的に支払う保険料も安くできるでしょう。
自営業の人
自営業者は、会社員と比較すると「公的医療保険の保障内容」が手薄です。例えば、会社員がケガや病気で働けない場合に支給される「傷病手当金」が存在しないため、ケガや病気で働けないと収入が途絶えるリスクもあります。収入が途絶えた上に、入院や手術で医療費の負担があれば、家計が苦しくなる可能性も否定できません。
自営業者が終身医療保険に加入していれば、支払い方法が短期払いの場合、毎月の保険料さえ支払えば医療保障が一生涯続きます。支払い方法で定額型を選んだ場合には、保険料の払込期間が終わっていれば、保険料を支払わなくても保障が受けられるでしょう。長期にわたり医療保障が必要と考える自営業者は、終身医療保険を検討しましょう。
医療保険に一生涯加入したい人
終身医療保険における最大のメリットは、医療保障が一生涯続くことです。医療保険は、加入時に「加入者の健康状態」を告知する必要があるため、健康状態が良いうちに加入すれば一生涯の備えができます。さらに、短期払いであれば、現役時代に「保険料の支払い」を終えられるため、退職後に保険料を支払わずとも、保障が一生続く状態をキープできるでしょう。
一方、定期型の場合には、その時の健康状態や年齢によっては加入できない可能性があります。例えば、80歳まで医療保障が続く定期型に加入したものの、保障が切れた80歳にあらためて医療保険への加入を試みたところ持病の関係で加入できないといったケースも考えられます。
そのため、医療保険に一生涯加入したい人には、終身医療保険が向いています。
医療保険を見直す際のポイント
医療保険は、その時の状況に応じて見直すことが大切です。この章では、医療保険を見直す適切なタイミングや、見直す際に意識すると良いポイントを解説します。
ライフステージに合わせて見直す
ライフステージとは、転職・結婚・出産・マイホーム購入・子どもの独立といった、人生におけるさまざまな節目を指します。ライフステージが変化すれば、家族形態や財政事情が変わることも多いでしょう。家族形態や財政事情に変化があれば、適する医療保険も変わる可能性があります。そのため、ライフステージに合わせて医療保険を見直すことも1つの方法です。
例えば、結婚や出産などによって扶養家族が増えた場合、医療保険の保障を手厚くしても良いでしょう。反対に、子どもが親元を離れて独立した場合には、医療保険の保障内容を軽くすることも考えられます。また、年を重ねて生活習慣病のリスクが高まった場合には、特約でがん保険を付帯するなども良いでしょう。
家計の状況に応じて見直す
ライフステージに変化があれば、収入や支出が増減するなど、家計の状況も変わる傾向にあります。例えば、家族が増えれば、以前よりも支出が増えます。起業で収入が不安定になったり、正社員からパートにシフトしたりすれば、支出を抑える必要性が出てくるでしょう。一方で、「転職による収入アップ」や「上の子どもが独立した」など、家計に余裕が出るケースも見受けられます。
家計の状況が変化すれば、「病気やケガに対して備える割合」や「保険と貯蓄の兼ね合い」などで重視するポイントも変わります。重視する内容が変化すれば、医療保険を見直しても良いでしょう。例えば、転職で収入が増えたタイミングで、より手厚い内容や貯蓄性のある医療保険に変更するなどが挙げられます。
定期型保険が更新になるタイミングで見直す
定期型の医療保険は、一定期間(5年や10年など)で更新のタイミングを迎えます。引き続き保障を受けたい場合は、「既存の保険を更新」または「他の保険に加入」のいずれかを選択しなければなりません。既存の保険を更新する場合、毎月支払う保険料は、以前よりも高くなる点に注意が必要です。更新後の契約期間が過ぎると再び更新のタイミングがおとずれ、その際にも保険料が上がります。
そのため、定期型保険が更新される直近のタイミングで、医療保険を見直すのも良いでしょう。例えば、将来のさらなる保険料上昇に備え、保険料が一生涯において変化しない終身医療保険に切り替えるなどが挙げられます。
社会的な変化に合わせて見直す
保険の更新やライフステージに変化がなくとも、数年に1度は保障内容を見直すと良いでしょう。社会的な変化があれば、自身に適した保障内容も変化する可能性があります。例えば、公的医療保険制度に変更があれば、医療保険の見直しが必要になるかもしれません。医療費の負担率が減り、その保障を医療保険でカバーする必要が出てくるようなケースもあるでしょう。
また、終身医療保険は長期間加入するため、インフレリスクに対応できない可能性もあります。例えば、病院の個室使用料が1万円でも、インフレで5年後には1万2千円になるかもしれません。医療保険の給付金が「入院で1万円/日」であれば、現在は窓口負担がなくても、5年後には2,000円を給付金以外から支払う必要があります。
そのため、終身医療保険に加入しても、定期的な見直しが必要です。
終身医療保険の仕組みを知って加入を検討しよう
終身医療保険で悩む場合には、終身医療保険の仕組みを知った上で、加入を検討することが大切です。
終身医療保険は、一生涯において保障が続き、保険料もずっと変わらない点が魅力です。一方で、保障が一定期間で終わる「短期型医療保険」と比較すると、加入時の保険料が高いため、家計の状況に応じて判断する必要があるでしょう。
また、終身医療保険に加入した場合にも、社会情勢やライフステージを考慮し、数年に1度ペースで定期的に見直すことが大切です。