不妊治療に民間の医療保険を利用できる?保険適用の条件や選び方を解説

民間の医療保険の中には、不妊治療を対象にしているものがあります。そのような医療保険に加入することで、不妊治療の費用負担を抑えられるでしょう。

本記事では、最初に不妊に悩んでいる人の割合を紹介します。その後に不妊治療の費用、公的医療保険の適用範囲と条件、不妊治療と民間の医療保険の注意点、民間の医療保険の選び方などを解説していきます。

民間の医療保険への加入を考えている人は参考にして下さい。

3組中約1組は不妊に悩んでいる

国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、不妊を心配した経験がある夫婦は35.0%にのぼります。3組のうち約1組が不妊に悩んでいるという結果です。子どものいない夫婦に限定した場合は55.2%まで上昇します。

不妊の検査・治療を受けた経験がある夫婦は全体の18.2%です。不妊に悩んだり、検査や治療を受けたりということは決して珍しくありません。

参考:国立社会保障・人口問題研究所の調査 第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)

不妊治療の費用はどれくらいなのか

主な不妊治療には、タイミング法、人工授精、体外授精があります。それぞれの費用について解説します。

タイミング法の費用

タイミング法は一般不妊治療の1つです。月経サイクルをもとに排卵の可能性が高い時期を計算して性交渉のタイミングをとります。超音波検査で卵胞を計測したり、必要に応じて排卵誘発剤を使用したりという場合もあります。

タイミング法は比較的、時間と費用の負担が軽い不妊治療法です。通常、1回の診療につき1万円以内で済むでしょう。ただし、他の不妊治療法よりも妊娠率が低いという側面も持ち合わせています。

人工授精の費用

人工授精は精液を採取し、遠心分離によって良好な精子のみを子宮内に注入する方法です。精子の移動距離が短いため、性交障害があったり、軽度の男性因子があったりという場合に効果的といわれています。

人工授精はタイミング法の費用に加えて、5,000円ほどの処置代がかかります。タイミング法よりも妊娠率が高くなる一方、大幅な妊娠率の上昇は見込めないようです。

体外授精の費用

体外授精は卵子を体外に取り出し、精子と受精させて受精卵を培養します。その後、発育した胚を子宮に戻し、着床を促す方法です。

体外授精は高い妊娠率が期待される一方で、費用は約15〜20万円と高額です。ただし、高額療養費制度によって一定額以上の医療費が払い戻されるため、費用を抑えられる可能性があるでしょう。

【2022年4月~】不妊治療における公的医療保険の適用範囲が広がった

「不妊治療は高額な費用と長い期間がかかる」というイメージがあるかもしれません。しかし2022年4月から公的医療保険が適用されたため、経済的な負担は軽減しています。

ただし、年齢などの適用条件が設定されているので確認が必要です。適用条件の詳細については次章で詳しく解説します。

不妊治療における公的医療保険の条件を確認しよう

不妊治療における公的医療保険の条件を説明します。年齢と通算助成回数、公的医療保険の適用前の治療、助成金の順に解説するので参考にして下さい。

年齢と通算助成回数の制限

不妊治療のうち、タイミング法と人工授精は制限なく公的医療保険が適用されます。しかし体外受精と顕微授精に関しては、女性の年齢と通算助成回数に制限があります。

女性の年齢通算助成回数
40歳未満1子ごとに6回まで
40歳以上43歳未満1子ごとに3回まで
43歳以上適用外

女性の年齢は、初めて治療を開始した時点の年齢です。例えば、39歳で治療を開始した場合、40歳を過ぎても6回まで助成を受けられます。

なお、43歳以上の女性が適用外の理由として、「体外受精の成功率の低さ」と「出産に至る割合の低さ」があるといわれています。

公的医療保険の適用前の治療も対象になる

公的医療保険の適用前後をまたいでも、基本的に保険診療が適用されます。

例えば、公的医療保険の適用前に胚を凍結保存し、適用後に凍結した胚を使って不妊治療を実施したといったケースです。この場合、新たに採卵する必要がないため、経済的な負担も軽減されるでしょう。

ただし「公的医療保険の適用前の治療が対象になるかどうか」は、各医療機関の判断に委ねられる部分もあるので事前確認が必要です。

助成金を受けとっていた人は対象になる?

2022年3月以前に特定不妊治療助成制度を利用した人もいるのではないでしょうか。

特定不妊治療助成制度とは、不妊治療の経済的負担を軽減するために、先進医療の費用の一部を助成する制度です。

2022年3月以前に不妊治療助成制度を利用していても、公的医療保険の適用条件を満たせば保険診療の対象となります。前述の通り、年齢に応じて通算3回、もしくは通算6回まで不妊治療を受けられるので安心して下さい。

公的医療保険の適用範囲が広がったことによるメリット

ここでは、公的医療保険の適用範囲が広がったことによるメリットを解説します。

窓口での負担が軽減する

保険診療の適用により、窓口で負担する治療費が原則3割になりました。従来は自由診療で全額自己負担になっていた場合でも、現在は3割の支払いで済みます。例えば、20万円の治療費がかかる場合、6万円の自己負担で済むということです。

また、厚生労働省に承認された先進医療に関しては、自由診療であっても保険診療と併用できるというメリットがあります。先進医療に含まれる不妊治療として、子宮内膜刺激胚移植法(SEET法)やタイムラプスなどがあります。

高額療養費制度を利用できる

高額療養費制度とは、医療費の負担が重くならないよう設計された制度です。医療機関などで支払う金額が1ヶ月間の上限を超えた場合、その超えた額が支給されます。

上限額は公的医療保険加入者(体外受精の場合は女性)の年齢と所得に応じて決められています。例えば、69歳以下で年収約370万円までの人(住民税非課税者以外)の1ヶ月間の上限額は5万7,600円です。仮に治療費が15万円かかった場合、9万2,400円が払い戻されます。

ただし、高額療養費制度の対象になるのは保険診療の治療費のみです。自由診療や入院時の食事代・差額ベッド代は対象外なので注意して下さい。

不妊治療に民間の医療保険を利用できる

不妊治療における公的医療保険の対象が見直されたことで、人工授精や胚移植術などが公的医療保険の手術に分類されました。その結果、民間の医療保険で手術給付金があるものは、保障対象になる可能性が高いでしょう。

先進医療特約が付いた医療保険に加入している場合、公的医療保険では適用外の先進医療も保障される可能性があります。その場合、最新の不妊治療技術の経済的負担を軽減できます。

不妊治療と民間の医療保険に関する注意点とは

ここでは、不妊治療と民間の医療保険に関する2つの注意点を解説します。

特定不妊治療助成制度が廃止になる

2022年3月までは、体外受精や顕微授精などで特定不妊治療精度を利用できました。しかし不妊治療が公的医療保険の対象となったため終了しています。

公的医療保険の適用により、体外受精や顕微授精などの費用負担は軽減されました。しかし、全ての不妊治療に公的医療保険が適用されるわけではありません。中には、公的医療保険が適用されない治療法を必要とする人もいます。

特定不妊治療費助成制度では幅広い治療がカバーされていたものの、現在の公的医療保険では対象外の治療もあります。そのため、「かえって経済的な負担が増加するケースもある」という点に注意して下さい。

民間の医療保険に加入すると備えやすい

不妊治療が保険診療になったことにより、民間の医療保険の保障対象は広がっています。民間の医療保険から手術給付金が支給されるケースも少なくありません。

ただし、保険会社や商品ごとに保障内容や条件が異なるため、自身のニーズに合った保険の選択が大切です。不妊治療や貯蓄、ライフプランなどを踏まえた上で、民間の医療保険への加入を検討してみて下さい。

妊活や出産に備えるためにおすすめの民間の医療保険における選び方

最後に、妊活や出産に備える民間医療保険の選び方について解説します。

【妊活前~不妊治療を受ける前】民間の医療保険の選び方

不妊治療の開始前の方が民間の医療保険の選択肢は広がります。妊娠から出産までカバーする医療保険だと安心できるでしょう。妊娠中の合併症や出産時の帝王切開などのリスクに備えられるからです。

ただし、民間の医療保険を選ぶ際は、免責期間に注意して下さい。免責期間とは、保険加入後から実際に保障が開始されるまでの期間のことです。例えば、「保障の開始日から2年経過後の治療が対象」といった条件があるかもしれません。そのため、保険に加入する前に確認が必要です。

【不妊治療中】民間の医療保険の選び方

不妊治療の開始前と比較すると、不妊治療中に加入できる民間の医療保険は限られます。実際に保険会社に加入を断られたというケースも珍しくありません。

ただし、妊娠中期までであれば、加入できる民間の医療保険も存在します。選択肢は限られるものの、加入条件や保障内容を比較検討して選ぶことが大切です。

民間の医療保険に加入して不妊治療の費用負担に備えよう

不妊に悩んでいる人は少なくありません。実際に不妊治療を行うには費用がかかるものの、公的医療保険によって原則3割の費用負担で済みます。ただし、不妊治療の種類によっては、年齢や通算回数の制限があるので注意して下さい。

また、公的医療保険の適用前から不妊治療を行っていたり、特定不妊治療助成制度を利用した経験があったりという人でも、公的医療保険は利用可能です。

公的医療保険の適用範囲が広がったことにより、医療機関窓口での負担軽減、高額療養費制度の適用というメリットがあります。

ただし、特定不妊治療助成制度の廃止によって、「逆に不妊治療の費用が増加した」という人もいるので注意が必要です。そのような費用の負担に備えるには、民間の医療保険への加入が効果的といえます。

実際に民間の医療保険を選ぶ際は、妊活前〜不妊治療を受ける前と、不妊治療中に分けて考えると良いでしょう。

「どの医療保険に加入すべきか判断できない」という場合は、ぜひ弊社にご相談下さい。お客様にとって最適な医療保険をご提案いたします。