60代で定年退職を迎え、収入や健康への不安を抱える人も少なくありません。病気やけがで入院する人も多く、医療費負担が重くなる可能性が高い時期です。
日本では公的医療保険の保障が充実していますが、医療費負担への備えとして民間医療保険への加入もおすすめです。
本記事では、60代の人に医療保険がおすすめの理由を説明します。他にも60代世帯の医療保険への加入率、医療保険を選ぶ際のポイント、保障内容の種類、医療保険以外で見直し・検討が必要な保険などを解説するので参考にして下さい。
60代でも医療保険はおすすめの理由
医療保険の必要性は個人の状況によって異なります。しかし、医療費負担への備えを手厚くしたいと考えている場合は、60代でも医療保険はおすすめです。その理由として、入院率とがん罹患率の高さがあります。それぞれ詳しく解説していきます。
男性・女性ともに60歳以降は入院率が高まる
厚生労働省が公表している「令和2年(2020)患者調査の概況」によると、人口10万人当たりの入院率は、高齢になるほど高い傾向が見られます。
特に、60歳を超えると入院率は高くなり、65歳に達した後の入院率(総数)は1%を超えています。要するに60歳以降は入院のリスクが高い状況です。
男性と女性の比較では、全体的に男性の入院率の方が高いものの、70歳以降は女性の入院率も1%を超えています。そのため、60代のうちから医療費に備えることが大切です。
以下は性別・年齢階級別の受療率(人口10万対人数)の一覧です。
年齢 | 総数(10万対人数) | 男性(10万対人数) | 女性(10万対人数) |
---|---|---|---|
45~49歳 | 345 | 387 | 302 |
50~54歳 | 478 | 551 | 404 |
55~59歳 | 664 | 776 | 551 |
60~64歳 | 895 | 1,064 | 730 |
65~69歳 | 1,207 | 1,444 | 983 |
70~74歳 | 1,544 | 1,797 | 1,318 |
75~79歳 | 2,204 | 2,461 | 1,997 |
80~84歳 | 3,234 | 3,440 | 3,088 |
85~89歳 | 4,634 | 4,795 | 4,546 |
90歳以上 | 6,682 | 6,706 | 6,673 |
年齢が高くなるほどがん罹患率が高まる
厚生労働省が公表している「全国がん登録 罹患数・率 報告」によると、がんの罹患率は45歳未満で4.2%、45~64歳で20.0%、65~74歳は29.7%、75歳以上で46.1%という結果が出ています。
次は全部位の年齢階級別罹患率です。40歳未満の男性は人口10万人に対して100人未満であるものの、60歳以上で1,000人を超えている状況です。また、30歳未満の女性は人口10万人に対して100人未満であるものの、70歳以上で1,000人を超えています。
このように、男女とも年齢が高くなるほど、がんの罹患率は高いことが分かります。
60代世帯の医療保険への加入率はどのくらい?
生命保険文化センターの資料によると、医療保険・医療特約の世帯加入率を世帯主年齢別に見た場合、「85〜84歳」「90歳以上」の世帯を除いて90%を超えています。
60歳以上でも医療保険・医療特約に加入している世帯は多く、特に60代は「60〜64歳」で94.2%、「65〜69歳」で94%となっています。
このように、医療保険の必要性を認識している人が少なくありません。
2021年の医療保険・医療特約の世帯加入率(世帯主年齢別)は次の通りです。
世帯主年齢 | 医療保険の世帯加入率 |
---|---|
29歳以下 | 90.8% |
30~34歳 | 94.2% |
35~39歳 | 92.6% |
40~44歳 | 94.6% |
45~49歳 | 95.4% |
50~54歳 | 96.2% |
55~59歳 | 94.7% |
60~64歳 | 94.2% |
65~69歳 | 94.0% |
70~74歳 | 92.2% |
75~79歳 | 91.8% |
80~84歳 | 85.3% |
85~89歳 | 92.9% |
90歳以上 | 83.3% |
出典:公益社団法人 生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」
60代で特に医療保険が必要な人の特徴
60代で特に医療保険が必要と考えられる人の特徴として、「高額な医療費への備えが十分ではない」「入院時に個室などの部屋を利用したい」「治療の選択肢を限定したくない」の3つが挙げられます。それぞれ詳しく解説するので参考にして下さい。
高額な医療費への備えが十分でない人
公的医療保険や高額療養費制度を利用することで、入院や治療にかかる費用を抑えられます。それでも自己負担額はゼロになりません。そのため、入院や治療が長期化すると家計への負担が重くなる可能性があります。
厚生労働省が公表している資料によると、35〜64歳の平均在院日数は29. 5日、65歳以上は47. 7日、70歳以上で50. 2日、75歳以上で54. 2日という結果が出ています。
このように、年齢が高くなるほど入院日数は長期化する傾向があるため、医療費負担への備えが必要です。高額な医療費に対する蓄えが十分ではない場合、医療保険でカバーする必要があるでしょう。
傷病分類別に見た年齢階級別退院患者の平均在院日数は次の通りです。
年齢別(総数) | 平均在院日数(日) |
---|---|
0~14歳 | 8.9 |
15~34歳 | 13.0 |
35~64歳 | 29.5 |
65~69歳 | 47.7 |
70~74歳 | 50.2 |
75歳以上 | 54.2 |
入院時に個室などの部屋を利用したい人
入院時に個室や少人数部屋などの部屋(特別療養環境室)を利用する場合、差額ベッド代が発生します。
特別療養環境室の要件は以下のとおりです。
- 病床数が4床以下
- 病室の面積は1人当たり6.4平方メートル以上
- 病床ごとにプライバシーの確保を図るための設備を備えている
- 個人用の私物の収納設備、個人用の照明、小机や椅子などを備えている
厚生労働省の資料によると、差額ベッド代の1日当たりの平均額は1人室で8,322円となっています。あくまでも1日当たりの金額なので、入院日数が長くなるほど費用がかかります。そのため、入院時に個室などの利用を考えている場合は、費用負担に対する備えが必要です。
差額ベッド代の1日当たりの平均金額(2022年7月1日時点)の推計は次の通りです。
部屋の種類 | 1日当たり平均徴収額(推計) |
---|---|
1人室 | 8,322円 |
2人室 | 3,101円 |
3人室 | 2,826円 |
4人室 | 2,705円 |
治療の選択肢を限定したくない人
先進医療費は公的医療保険の対象外なので、自己負担額が高額になる可能性があります。先進医療の内容によっては250万円以上の費用がかかります。
また、先進医療を受ける場合、入院期間が長くなる可能性があるため、入院費の自己負担分の備えも必要です。仮に十分な貯蓄がある場合でも、経済的な負担を考慮すると医療保険で備える必要があるでしょう。
先進医療と技術料、平均入院期間は次の通りです。
先進医療名 | 技術料(1件当たりの平均額) | 平均在院日数 |
---|---|---|
陽子線治療 | 265万9,010円 | 15.6日 |
重粒子線治療 | 313万5,656円 | 4.2日 |
抗悪性腫瘍剤治療における薬剤耐性遺伝子検査 | 3万7,514円 | 50.6日 |
ウイルスに起因する難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法) | 2万8,140円 | 2.7日 |
細胞診検体を用いた遺伝子検査 | 8万522円 | 4.3日 |
内視鏡的胃局所切除 | 21万717円 | 8.6日 |
子宮内膜受容能検査 | 13万409円 | 不明 |
60代の方が医療保険を選ぶ際のポイント
医療保険を選ぶ際のポイントとして、入院給付金の金額、手術給付金の保障内容、がんや通院保障などの特約、保険期間(終身・定期)の4つがあります。それぞれ解説していきます。
入院給付金の金額
入院給付金とは、病気やけがで「入院」した際に受け取れる給付金です。入院日数に応じて日額給付金を受給できるケースが多いでしょう。保険商品によっては一時金で受け取れる場合もあります。
ただし、入院給付金の保障期間には上限があります。上限を超えると支給されないので注意して下さい。
医療保険を選ぶ際は、「どのくらい入院給付金の日額があれば十分か」という観点から検討することが大切です。
手術給付金の保障内容
手術給付金とは、病気やけがで「手術」を受けた場合に支給される給付金です。対象の手術や支払い回数は保険商品によって異なるため、保険会社や代理店に確認して下さい。
1回の手術につき一律で支払われる給付金もあれば、手術内容によって倍率が設定されている給付金もあります。
医療保険を選ぶ際は、手術給付金の保障内容も重視すると良いでしょう。
がんや通院保障などの特約
特約とは、基本的な保障に追加できる契約です。特約によって保障内容を手厚くできます。例えば、通院保障、三大疾病保障、がん保障などがあります。
主契約(入院・手術給付金など)と特約を組み合わせることにより、自身のニーズに合った保障を付けられるというメリットがあります。ただし、保障を手厚くすればするほど保険料も高くなるので注意して下さい。
医療保険を選ぶ際は、特約の内容も判断材料の一つになります。
保険期間(終身・定期)
保険期間とは、保障が継続する期間のことです。「終身型」と「定期型」の2種類があります。
終身型は文字通り、一生涯の保障を得られるタイプです。保険料の払込方法は有期払込型と終身払込型に分かれます。一般的に終身払込型の方が毎月の保険料を抑えられます。
一方の定期型は、10年や15年といったように一定期間で満了する保険です。満了を迎えたタイミングで更新するか、他の医療保険に加入するかを選択します。一般的に加入時の保険料は抑えられるものの、更新時に上がります。
高齢になればなるほど病気のリスクは高くなります。そのため、契約時の健康状態によっては更新できないかもしれません。60代で医療保険への加入を検討する際は、健康なうちに終身型に加入することをおすすめします。
健康状態に不安がある場合は条件付きで加入できる保険を検討
持病や既往歴があって健康状態に不安な人でも、「引受基準緩和型」「無選択型」の医療保険であればには条件付きで加入できるかもしれません。
引受基準緩和型とは、告知項目数が通常の医療保険よりも少なく、持病や既往歴があっても加入しやすいタイプの保険です。
また、無選択型の医療保険は、告知なしで加入できるタイプの保険です。引受基準緩和型よりも、さらに加入条件が緩いという特徴があります。
一般的に無選択型保険よりも引受基準緩和型の方が保険料は安くなります。ただし、通常の医療保険と比較した場合、引受基準緩和型も無選択型も割高になるため、家計とのバランスを考慮した上で加入を検討しましょう。
医療保険以外で見直しや検討が必要な保険
60代になると子どもの独立や退職などでライフスタイルが変わる人も少なくありません。そのため、現在加入している保険を全体的に見直してみることがおすすめです。医療保険以外で見直し・検討が必要な保険には、死亡保険、がん保険、介護保険の3つがあります。それぞれ解説するので参考にして下さい。
死亡保険
死亡保険とは、被保険者が死亡した場合に受け取れる保険です。一般的に遺された家族の生活保障のために加入します。
死亡保険の種類には、一定期間のみ保障を受けられる定期保険と、保障が一生涯続くタイプの終身保険があります。
加入時の保険料に関しては、一般的に終身保険よりも定期保険の方が安いでしょう。ただし、定期保険は更新時に保険料が高くなったり、健康上の問題で加入できなかったりという懸念があります。特に60代で加入した場合、70代以降の更新が困難になるかもしれません。
一方の終身保険に関しては、定期保険よりも加入時の保険料が割高です。ただし、解約しない限り保障が一生涯続くため、継続して保障を受けたい場合におすすめです。
なお、2022年度における60代の死亡保険への加入率は、男性が85.8%、女性が86.5%となっています。
出典:公益社団法人 生命保険文化センター「生命保険に加入している人はどれくらい?」
がん保険
がん保険とは、がんによる入院や手術、通院治療などの保障に特化した保険です。年齢と共にがんの罹患率は上がるため、がん保障の見直しも必要になります。
一般的にがんの治療は、入院や通院期間が長くなる傾向があります。その場合、高額な医療費が発生する可能性が高いでしょう。
治療期間が長引くほど医療費の負担は重くなるので、がん保険で保障を手厚くするのも一つの方法です。
なお、2022年度における60代のがん保険への加入率は、男性が45.0%、女性が38.2%となっています。
出典:公益社団法人 生命保険文化センター「特定の病気などに備える生命保険の加入率は?」
介護保険
65歳以上で一定の介護・支援状態になった場合は、公的介護保険によって介護費用の負担を抑えられます。
民間介護保険は公的介護保険を補完するための保険です。所定の要介護状態になった場合に一時金や年金が支払われます。
高齢になると介護の必要性が高くなります。民間の介護保険に加入することで経済的なリスクに備えられるでしょう。保険料は年齢や加入条件によって異なります。
2022年度における60代の民間介護保険への加入率は、男性が8.5%、女性が9.3%となっています。
出典:公益社団法人 生命保険文化センター「民間の介護保険・介護特約の加入率は?」
60代に医療保険への加入はおすすめ!
60代は男女共に入院率やがんの罹患率が高いため、医療費負担が重くなる可能性があります。
実際、60代世帯の医療保険への加入率は90%を超えており、医療保険が必要と感じている人は少なくありません。
60代で医療保険の見直しや加入を検討する場合は、保障内容と保険料のバランスを考えて選ぶことが大切です。
「60代に最適な医療保険が分からない」という場合は、ぜひ弊社にご相談下さい。お客様のご希望やライフプランを踏まえた上で、最適な保険をご提案します。