保険証の種類はどのくらいある?それぞれの保険証の特徴と加入対象をわかりやすく解説!

この記事では保険証の種類と保障内容を紹介しています。公的医療保険の必要性や民間医療保険に加入する意味、よくある質問も紹介しているので、手早く知りたい人におすすめです。

この記事を監修した専門家

田沼 隆浩

株式会社エコスマート 事業開発責任者
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

略歴

2004年から大手保険代理店で保険事業に従事。M&Aを中心に子会社社長などを歴任。2021年より株式会社エコスマートへ事業開発責任者として入社。保険セミナーの実績も多数あり。

健康保険証は大きく分けて3種類

国民は原則として「公的医療保険」と呼ばれる医療保険制度への加入義務があります。
公的医療保険を利用するには、医療機関窓口で「健康保険証」の提示が必要です。

この健康保険証は大きく「社会保険」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」に分類されます。給与所得者か否かで加入する保険は異なり、一定の年齢になれば後期高齢者医療制度へ移行します。

公務員や会社員のような給与所得者は社会保険

社会保険は、事業所に勤務する給与所得者が加入する健康保険です。会社員や公務員はもちろん、パートやアルバイトの人も加入する場合があります。

会社員の場合、主に大企業が設けている健康保険組合で運営・管掌される「組合管掌健康保険」、中小企業・零細企業を対象とする全国健康保険協会(通称:協会けんぽ)が運営・管掌する「全国健康保険協会管掌健康保険」へ加入するケースが多いです。

一方、公務員・私立学校教職員の場合は「共済組合」に加入します

給与所得者以外は国民健康保険

国民健康保険は、自営業や自由業者、無職など給与所得者以外の方々が加入する健康保険です。

給与所得者の方々が独立して自営業者となったり、事業所を退職したりした場合、こちらの健康保険へ変更しなければいけません。

一定の年齢になれば後期高齢者医療制度

後期高齢医療制度は、主に75歳以上が加入する健康保険です。社会保険・国民健康保険いずれかに加入している方々は、基本的に75歳となれば後期高齢者医療制度に移行します。

後期高齢者医療制度は加入者の医療費負担が大幅に軽減される等、充実したサポートが利用できます。

社会保険について

社会保険は職業別にいろいろと種類があります。会社員や公務員、船員や自衛官等に分けられ、サポート内容も充実している場合が多いです。

社会保険の保険証番号はいずれも8桁で共通しています。保険者番号の上2桁で自分が加入している社会保険がわかります。

職業別の健康保険証・保険者番号等は下表の通りです。

保険者番号加入保険
01全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)
02全国健康保険協会管掌船員保険(協会けんぽ)
03・04日雇健康保険
06組合管掌健康保険
07防衛省共済組合自衛官診療証
31~34共済組合

社会保険の保険者

保険者とは保険料の納付を受け、健康保険事業を行う団体です。協会けんぽや各事業所の健康組合を指します

社会保険の場合、保険料は毎月給与から差し引かれ、健康保険加入者が病気やケガをした場合、その入院・治療をサポートするための財源として役立てられる仕組みとなっています。

社会保険のサポート内容が手厚い

社会保険に「傷病手当金」が用意されている点は大きな特徴といえます。

傷病手当金は病気で休業中、保険加入者本人・家族の生活を保障するために設けられた制度です。病気やケガで勤務先を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。

基本的に1日当たりの傷害手当金の支給額は、「支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)」で計算します。

また、健康保険組合によっては差額ベッドも保険対象となる場合があり、特に大企業等が設立した健康保険組合の健康保険は、ユニークなサポートが多いといわれています。

国民健康保険について

国民健康保険は、給与所得者以外の方々が加入する健康保険で、自営業者・自由業者の人はもちろん無職の人も加入する必要があります。

被保険者が納付する仕組み

国民健康保険の加入者は、基本的に毎月保険料を納付していく仕組みとなっています。納付方法は次の2種類です。

納付方法内容
普通徴収年間保険料を6月期~翌年3月期に割り振り、納付書または口座振替等で納める方法。
最近ではモバイルレジ納付・クレジットカード決済・電子マネー決済での納付も可能。
特別徴収年金受給者が対象で、受け取る年金から事前に保険料額を差し引いて納める方法。
年金支給月である2・4・6・8・10・12月に差し引かれる。

国民健康保険の保険者

国民健康保険の保険者は、都道府県及び市町村(特別区を含む)です。

都道府県は財政運営の責任主体としての役割があり、給付に必要な費用を市町村へ支払い、市町村が行った保険給付を点検します。また、市町村に対し必要な助言・支援等も行います。

一方、市町村(特別区を含む)は被保険者証等の発行や保険料の収納を担い、保険給付の決定や被保険者(保険加入者)の特性に応じ、きめ細かい対応等が主な役割です。

生活保障はあまり充実していない?

国民健康保険に加入すれば、ほとんどの医療機関での診療は3割自己負担のみで受けることが可能です。

ただし、国民健康保険の場合だと、加入者の生活保障までは対象とならない点に注意するべきでしょう。例えば社会保険の場合と違い、傷病手当金のような加入者本人やその家族が生活に困窮しないための生活保障は、国民健康保険に用意されていません。

国民健康保険加入者が病気・ケガで入院している間は、貯金を切り崩すか、家族にその分稼いでもらうか、何らかの方法で金銭的負担を補填する必要があります。

後期高齢者医療制度について

後期高齢者医療制度は、75歳以上が加入する健康保険です。社会保険・国民健康保険いずれの加入者であっても、75歳になれば後期高齢者医療制度へ移行します。

保険証は75歳になる方へ交付

75歳を迎えると1人に1枚「後期高齢者医療被保険者証」が交付されます。加入中の公的医療制度(健康保険・国民健康保険・共済等)に関係なく、75歳以上の人はすべて後期高齢者医療制度へ移行します。

75歳の誕生日の前の月に、お住まいの市区町村役場から被保険者証がご自宅へ郵送されるので、わざわざ窓口へ出向く必要はありません。

後期高齢者医療制度の保険者

都道府県ごと全ての市町村が加入する「後期高齢者医療広域連合」により、被保険者の資格認定・管理、被保険者証の交付、保険料の賦課、医療給付等の事務が行われます。

一方、市町村は保険料の徴収・窓口業務(届出・申請受付等)を行います。

後期高齢者医療制度は1割負担?

後期高齢者医療制度に移行すれば、基本的に保険診療は1割負担です。

ただし、同一世帯の被保険者のうち、所得控除後の課税所得で145万円以上となる人がいる場合は、原則として現役並み所得者とされ、社会保険・国民健康保険の場合と変わらず3割負担となってしまいます。

3つの公的医療保険は必要?

保険診療を安価に受けられる

3つの公的医療保険「社会保険」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」のどれかに加入していれば、保険診療時に、医療費の7割をサポートしてもらえます。

また、高額療養費という1ヶ月にかかった医療費が、自己負担限度額分を超えていた場合、その差額が戻ってくる制度も利用可能です。

このように日本の公的医療保険制度は、非常に手厚いサポートが期待できるため、加入メリットは非常に大きいです。

未加入の場合のリスク

公的医療保険制度に未加入のままでは、病気やケガを病院で入院・治療した場合、その医療費全額を自分で負担しなければいけません。

例えば保険診療を受けた場合、公的医療保険制度へ加入していたなら3万円の自己負担分で済んだにもかかわらず、未加入では7割給付されるはずだった分が自己負担となるので、10万円も負担する事態となります。

未加入が発生する主なタイミング

原則として国民の方々は公的医療保険のいずれかに入る必要があります。
しかし、退職後14日以内に、市町村や国民健康保険組合へ国民健康保険加入の手続きを行わない場合には、未加入の状態が発生します。

民間医療保険との違い・必要性について

公的医療保険の他、生命保険会社等が販売している医療保険もあります。民間の医療保険の特徴や役割について解説します。

民間医療保険はあくまで任意

生命保険会社の販売する医療保険は、あくまで任意加入です。民間の医療保険に加入するか否かを決めるのは本人次第であり、不要と感じたら加入しなくても問題ありません。

また、たとえ保険契約を締結し医療保険へ加入したとしても、契約者側からの都合で自由に契約を解約できます。

民間医療保険は公的医療保険の保障をさらに充実させる

民間の医療保険へ加入すれば、公的医療保険の保険給付に加えて更なる手厚いサポートが期待できます。民間の医療保険では保険診療の範囲外のサポートも受けられるのです。

例えば、有料病室で入院する場合は保険診療の範囲外の医療サービスなので、基本的に病室の利用費(差額ベッド代)は全額自己負担です。しかし、民間の医療保険の入院給付金があれば、この差額ベッド代の負担を賄うことができます。

その他にも通院費を保障する通院給付金や、全額自己負担となる先進医療費(先進医療技術部分)を保障する先進医療給付金等、様々な保障が用意されています。

保険証の種類についてよくある質問

こちらでは保険証に関する様々な疑問点へ回答します。

75歳になるまではどんな保険証なの?

現在の公的医療保険から後期高齢者医療制度へ移行するつなぎの措置として、70歳~74歳までは高齢受給者証を利用します。

この高齢受給者証を利用すれば、基本的に自己負担分は2割です。ただし、現役並み所得者とみなされると3割自己負担となってしまいます。

国民健康保険加入者の場合は市区町村から高齢受給者証が交付され、社会保険の加入者は協会けんぽ・各健康保険組合から健康保険高齢受給者証が交付されます。

国民健康保険料が払えないとどうなる?

国民健康保険料を納期限経過後も納付しない場合、市区町村側からまず督促状が送付され、さらに文書、電話で催告も行われます。

やむを得ない理由もなく督促・催告を放置し、滞納を継続していた場合、保険証の返還が要求されます。返還に応じないと10万円以下の過料が課せられるので注意しましょう。

また、それ以外にも財産の差押処分を受けるおそれや、延滞金も発生してしまいます。どうしても納付が難しいときは、市区町村の窓口で相談し担当者と対応方法を話し合いましょう。

いずれ紙の保険証はなくなるの?

政府は現在、マイナンバーカードと保険証の一本化を図っており、利用者にお得な奨励策(2023/2までの申込みでマイナポイント最大2万円キャンペーン)を行っています。

将来的に紙の保険証をなくす方針でマイナンバーカードへの移行が進められています。しかし、マイナンバーカードへの移行は今のところ任意であり、いきなり紙の保険証が使えなくなる事態はないでしょう。

ただし、今後のマイナンバーカードと保険証の一本化に関する報道は、日ごろから良く確認しておいた方が無難です。